自国だったら別に意識しなくてもらなんとなく入ってくるような常識みたいなものも、海外にいるとあえてとりにいかない限りなかなか入ってこなかったりします。
語学の問題もですが、体に染みついているこれって常識だよね、みたいなものが違いますからね。
なので、成人してからすることになる就業に関することになると知らないことも多くあります。しかも海外だと色々制約も課せられたりする場合もあったりします。
就労ビザで韓国に来ている場合、ビザの延長問題や出入国管理局での手続きなどいろいろと手間がかかることもあると思いますし、結婚ビザで就労には特に問題はないものの、規定以上の仕事を任されて大変、なんていう話も聞いたことがあります。
外国人だと困ったことがあってもどこに相談に行ったらいいかもわからず、結局泣き寝入りなんてことも。
今回「労務士」さんがセミナーを開いてくださいましたので、そこで聞いてきたことをシェアしたいと思います。
韓国も法治国家。
法律で守られていることもたくさんあります。わからないからしょうがない、なんてことが少しでもなくなるといいな、と思います。
今回開催してくれたのはこちら。光明市立青少年相談福祉センター内にある光明市家族センター
韓国在住の方でしたら、一度は「多文化センター」というのを聞いたことがあるんじゃないかなと思います。
地域にいくつかあり、日本人向けの多文化センターといえば二村にある「グローバルビレッジセンター」が有名です。
こちらでは日本語での催し物が開催されていたり、銀行に関するセミナーなど日本語で聞けるものがあるため、韓国に来たばかりの方には安心して通えるセンターになると思います。
ほかにも英語圏の方が多い場合は主に英語対応してくれるところなどもあるそうですが、基本多文化センターでは韓国語での対応となります。
今回行った鉄山(チョルサン/철산)にあるセンターは多文化センターではないのですが、家族センターという名前で一般的な家族の問題に加えて、外国人の生活の支援もしてくれています。
こちらの施設はベトナム出身の方や中国の方が多く利用しているということで、パンフレットなんかも中国語やベトナム語のものが見られました。
そのように訪問する数の多い国に合わせていろいろなプログラムも開かれるそうです。
光明市立青少年相談福祉センターはこちら
地下鉄7号線鉄山(チョルサン/철산)駅からすぐ近くです。
すぐ隣には光明ソンエ病院がありますので、バスもたくさん通っていて、通いやすい位置にあります。
友達はこちらで開催されている韓国語の勉強のクラスに通っていました。
家族センターは2階です。本当に親切な職員の方が多く、いろいろしてくださるので、ありがたいです。
労務士さんによる2時間のセミナー開始
セミナーは約2時間でした。セミナーでは韓国で働く際、勤労者がどのようにして法で守られているか、何か問題があった場合、どこに行ったらいいか、など具体的なことを労務士さんがたくさん教えてくださいました。
今回参加した人はベトナム人ほとんど、ロシア人、私の約10人ちょっとのセミナーでした。
小規模でのセミナーでしたが内容は本当にしっかりしたものでとても勉強になりました。
労務士ってどんな人?
簡単に言うと、
給料が支払われない、会社に出社したらいきなり解雇されたなど仕事をしている際に起きた問題などを代理で仕事の問題を解決してくれる人
です。
○○士がつく仕事はいろいろありますが、労務士というのは何と日本と韓国にしかないそう。
仕事をしていて不当な扱いを受けた!どうしたらいい?
もちろんないに越したことはないのですが、時におきてしまうのが給料の未払いや不当解雇などの問題です。
日本だったら失業に関してだったらハローワークに行く、くらいはわかるのですが、そういえば日本でも給料の未払いの問題はどこに申請したらいいのでしょうか?
そういえば日本のことも知らないかも・・・
日本ではどこに行ったらいいかわかりませんが、今回のセミナーに参加して、韓国ではどこに行って申請したらいいかがわかりました!
申請するところはそれぞれ決められた機関があります。
また、申請をするには会社がある地域の機関に申請をしなければいけません。家の近くや地域外の機関では申請ができません。
申請したいことは何?内容別申請機関はこちら!
不当な扱いとして、例えば不当に解雇された場合には、会社がある地域を管轄している「지방노동위원회」というところに申請をしに行きます。
また、給料の未払いに関する問題には노동청に行って、진정서(陳情書、おそらく日本でいう陳述書のようなもの)を提出します。ネットで申請すると自動で該当地域に申請してくれるようになっているとも言っていました。
仕事をしているときにけがをしたら근로복지공단に申請します。こちらも会社がある地域の公団に行って申請をします。けがや病気の種類にもよると思いますが、最近はわざわざ会社の上司に行ったりしなくても病院に行って労災です、というと病院のほうで手続きをしてくれたりするような病院もあるそうです。
セクハラ・パワハラなどの問題に関しては「국가인권위원회」というところに申請をします。
まとめると、
不当解雇など雇用に関すること→지방노동위원회
給料に関すること→고용노동청
労災の申請など→근로복지공단
セクハラ・パワハラなど人権に関することは→국가인권위원회
問題が深刻化!どんなふうに解決されるの?
申請してすぐに雇用主も了解&解決。みたいな流れになったらいいのですが、問題が深刻化していった場合どうなるのでしょうか?
この場合、근로감독감がその内容をチェックし、検事にいきます。そして事業主と労働者を同時に呼んで調査をするんだそう。
ここまできてしかも事業主に問題があった場合、事業主は処罰を受けることになります。この時勤労者側が処罰を希望した場合、事業主には前科がつくことになります。
勤労者の7,80%の方はそこまでは望まず、大体給料を払ってもらったり自分が希望する内容を認められた場合は処罰までは望まないそうです。
→また、ここまでの内容になると、月収400万ウォン以下の場合国選労務士をつけてくれるそうです。
給料の未払い!3か月働いても給料がもらえなかったらやめるべき?
仕事をしているにもかかわらず給料が支払われず、それが3か月続いた場合、そこはやめてさっさと「고용노동청」に申請しましょう。
3か月分でしたら700万ウォンまでは政府のほうから保証してもらえるのですが、それ以上になると対象外になります。
全額じゃなくてもちょっとずつくれてるから、とかオーナーさんいい人だし…で、お給料をもらえなくてもいいのならいいですが、もらえない場合多いですよ、とfeat.労務士さん
注※すべての勤労者が保証されているわけではありません
上記のような内容が基本法律としてあって守られているのですが、それが適応されないところもあります。それは
1.社長を抜かして勤労者が5人以下の事業所
2.フリーランサー
です。
例えば、韓国では1週間の基本労働時間は40時間になりますが、5人以下の事業所ではこれを守らなくても法律として守られるところではありません。
具体的に言うと、1週間の労働時間が40時間を超えた場合、6人以上の事業所では残業手当を出さなければならないのですし、祝日に出勤した場合基本賃金にプラス50%を支給しなければならないのですが、5人以下の事業所の場合、この法律は該当しないため、プラスの金額を払わなかったとしても不当な扱いにはなりません。
ほかにも5人以下の事業所では1か月前に告げれば、解雇も事業主の自由にできることになっています。6人以上の事業所では3か月以上働いていた時には「해고 예고 수단」などもあるのですが、そういったものも適応されません。
2.フリーランサーは普通の勤労者に比べたらそもそも法的に守られていません。なので、外国人の職種として多い語学講師の場合、学院などに所属して勤めて場合は、上にあげたような法律が適応されますが、フリーランサーとして個人的に活動している場合はその限りではありません。
こうやっていろいろと知識をえても、
じゃあ実際どうしたらいいの?
ってなりますよね。そこを労務士さんに対応をお願いするとどうしたらいいかを教えてくれます。労務士さんに相談する料金はそれぞれ異なってきますので、直接聞いてみる必要があります。まずは専門の機関に足を運んで自分でできるかどうか確認をしてみましょう。
韓国の基本的な労働者に関する法律を知ろう!
韓国で仕事をする場合、基本的にこういったことを守るよう法律で定められています。
会社など組織に所属して働く場合には覚えておいた方がいいことになります。
근로계약서(契約書)を就業が決まった時点でかわすこと
基本的にはこれを書いてから就業を開始するように決まっています。
事業主によってはわざとではなく、他意もなく、よく知らなくて書かないということもあるそうですが、基本的にはこの労働契約書を書かないと処罰の対象になります。(事業主側が)
なので、基本書いてから仕事をしましょう。
また書いた契約書の1部は事業主が、1部は自分が持っているようにします。
契約職の場合
契約社員として仕事を開始する場合、必ず○○日~の記載があるものを記載します。
契約社員として2年同じ会社で業務を行った場合3年目からは正社員として扱うように法律ではなっているそうなのですが、55歳以上の人はその限りではありません。
55歳以上の人は高齢者雇用というものになり、高齢者を積極的に雇用できるようにするために無期契約職というもので、正社員にしなくてもいいという法律になっています。
また、契約職の場合も
1週間の労働時間 40時間
残業可能時間を含めると52時間
になっていますが、お互いが了承した場合には1週間68時間までは就業が可能になっています。
残業になる場合、追加で50%を追加で支給する必要があるのも同じです。
연차휴가(有休)
最初の年次には基本15日ありますが、366日を超えると1か月に1日ずつ追加されます。
ただ、有休には時効があり、3年請求がなかった場合無効になります。
また労災も3年だそうで、退職後でも3年以内だったら請求ができるのだそう。
賃金について
2023年現在ソウルの最低賃金は
時給の場合 9,620원
日当の場合 76,960원
です。見習い期間の場合80%~90%の支給するところが多いそうです。
また、給料は日払い、週払い、月払いはOKですが、2か月ごとなどはできません。
1年以上勤務した場合、1か月分の退職金があります。日雇いでも1年以上働いた場合、退職金がもらえます。
1週間に15時間以上1年間働いていたらアルバイトでも退職金があります。
ちょっとここをしっかり聞き逃してしまったのですが、15時間以上働かない週を抜いて1年以上働いているか、もしくは1年以上働いている中で、15時間働いていない週の分を除いて退職金が支払われるのだそうです。
計算はすべて1年単位でする、といっていましたので、後者の方が正しいかもしれません。
また、1年ごとですので、364日でやめてしまうと1年と認定されません。366日でもいいので、1年は働きましょう。
失業保険はどうなってる?
失業保険は契約満了の時にもらえます。ただ、自分でやめたいと会社に申し出たときにはもらえません。
ただ、例えば引っ越しで勤務先が遠くなるためやむを得ず退社する場合など、引っ越し先の住所が記載されている公的な書類の準備ができれば失業保険がもらえることもあるそうです。
また、自分でやめた時には失業保険は出ませんが、例えば
12か月勤務 → 自分の意思で退社(なので本当は失業保険はない) → その後1か月派遣で勤務 →契約満了 → 失業保険の申請が可能
になるのだそうです。
そういえば、以前日本語を教えていた学生さんで、同じことを言っていた学生さんがいました。その学生さんからは詳しく話は聞きませんでしたが、たぶんこんな感じだったと思います。
失業保険の申請は、居住地の고용복지플러스센터で登録します。
会社を辞めてから8日が過ぎてから申請ができます。
まとめ
2時間のセミナーで韓国で働く際の基本的な労働者の権利や法律に関して本当にしっかり教えてもらえました。
内容は労務士さん曰く
韓国人も知らなかったりしますよ
という内容でしたので、もしかしたら周りの韓国人に聞いても知らないこともあったかもしれません。
また、今回セミナーで聞いたことを私がまとめたものですので、聞き間違ったところ、勘違いしているところなどもあるかもしれません。
正確なところは労務士さんに相談していただくのがベストです。
また、法律でこうなっている、というだけで日本もそれからほかの国もそうだと思いますが、韓国もこれが確実に守られているというわけではありません。
ただ、法律ではこうなっているということを知っているだけでも対応の仕方が変わってくるかもしれませんので、不当な扱いを受けないためにも知っておいた方がいいでしょう。
また、何かあったときには該当の機関に対応を申請する必要があるのですが、そのお手伝いを労務士さんがしっかり対応してくれます。
私もしたことはないので正確なところはわかりませんが、必要書類とか、何が重要とか労務士さんが詳しいですので、もちろん困ることなんてないほうがいいですが、何かあったときには労務士さんに相談してみるのも手です。
韓国で働く際の参考になりましたら幸いです。
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